前略、子育て中のお母さん方へ
 新入園、進級、おめでとうございます。さあ、新しい生活が始まりました。と思ったら、子どもが繰り返し、吐くようになってしまった・・・という場合、周期性嘔吐症かもしれません。「吐く」というのは、本人も家族も、辛いものです。病気を知って、自分のお子さんに(他のお子さんでも)、このような症状が見られたら、どうしたらいいかを知っていて欲しいので、昨年7月のゲロゲロピーピー号に続いて「吐く」がテーマです。

周期性嘔吐症とは 

子どもが(周期性の)嘔吐を繰り返し、検査をするとケトンという物質がたくさん出ているものを「周期性嘔吐症」といいます。(もちろん、同じような症状の、何かの病気が原因の場合は除きます。)

子ども特有のもので、体質が関係しています。反復性嘔吐症、アセトン血性嘔吐症ともいいます。(心因性嘔吐症とは同じではありません。)小さい子では2歳で、大きい子では10歳くらいまでに多く起こりますが、平均では5歳で初めて発症しています。

原 因

周期性嘔吐症になる子どもは、神経の発達が未熟で身体的・精神的ストレスを受けると嘔吐中枢(脳の嘔吐を起こす部分)が刺激を受けやすいと考えられています。(家族に偏頭痛を持つ人が多いことから)大人の偏頭痛と関係があるのではないかとも言われていますが、まだ完全には解っていません。嘔吐を「繰り返す」原因は、何か小さなきっかけで、すぐ嘔吐する「くせ」がついていることが多いようです。

症 状

2歳から10歳くらいまでの子どもが突然激しい嘔吐を起こし、数日間続きます。嘔吐が始まるきっかけは吐き風邪などの病気や、行事で緊張したり興奮したりすること、環境の変化などが多いようです。一度吐き始めると、たて続けに吐き、胃液や胆汁だけになっても吐き続けます。ひどい場合は、激しく吐くために食道から血が出ることさえあります。)

経過を詳しくみると、吐くときは、まず元気がなくなり、顔色が悪く、手足が冷たくなります。そして吐く息が独特の甘い匂い(アセトン臭)になります。また、下記のような症状を伴うこともあります。回復期には食欲が増す場合があります。嘔吐が夜または早朝に多いのも特徴です。

 嘔吐は1日~数日(平均24~43時間)続き、このようなエピソードが年に数回繰り返されます。(周期は一定で通常2~4週間ごとが多い。)

症 状

倦怠感(だるさ)、蒼白(顔色が悪い)、発熱、唾液過多(よだれ、つば)、腹痛、むかつき、食欲不振、嘔気、便秘、下痢、頭痛、しゅう明(まぶしい)音過敏、めまい

治 療

病院では、まず絶食し、必要ならば点滴治療などで脱水や体の水分・塩分・糖分のバランスを補正します。 薬は、ストレスを防ぐ薬、吐き気止めの薬、偏頭痛の治療薬、「五苓散」、「小建中湯」、「桂枝人参湯」などの漢方薬などが場合によって使い分けられています。では、家庭ではどうしたらいいでしょうか。(ゲロゲロピーピー号でも紹介しましたが。)

吐いたときの家庭での手当て;とにかく脱水予防です。イオン飲料、スポーツドリンクなどの、塩分と糖分を適当に含む水分を中心に、吐いても構わないように洗面器などを用意して、少しずつ、たくさん飲ませます。このとき、水分の温度は本人がよい温度(温かいか冷たい)でよいです。また、下記のつぼを刺激したり、漢方薬や制吐剤を使用したりするのもよいです。ただし、周期性嘔吐の場合、少しでもひどくなったら、医療機関を受診して点滴治療などを早くしたほうがよい場合も多いので、あまり家庭で無理しないでください。嘔吐がおさまり、回復すれば普通に生活してよいです。

吐き気予防のつぼ

背中の中間点よりやや上部、ちょうど胃の裏側辺りに吐き気の「つぼ」があり、そこを温める、冷やす、マッサージする、指圧するなどの方法で刺激すると、吐き気を抑える効果があります。(我が家では、貼るカイロをペタンと貼ります。)

ここで、一言アドバイス。

よく、周期性嘔吐症の子どもは「無理をさせないほうがよいか?」と質問を受けますが、生活や活動の制限はありません。なぜなら、「安静にしていれば嘔吐を予防できる」というものではない病気です。嘔吐をおそれて生活を制限するより、できるだけ普通に活動して、症状が始まってしまったら早めに対応すればよい、という考え方が良いでしょう。

先の見通し 

最初に症状が出てから、平均2年4ヶ月で治癒しています。そして遅くとも思春期までに、多くは自然に治ります。周期性嘔吐症の子どもの4人に1人は、偏頭痛になるといわれていますが、そもそも、この病気になる子どもの80%が、家族に偏頭痛がみられます。

「吐く」という症状は、本人も辛いですが、寝具や家具が汚れることが多く、後始末をするお母さんの苦労も大きいのですよね。何かのせいにしたい気持ちになりますが、アレルギー体質と同じで、年月が過ぎて、治っていくまで、辛抱するより仕方ないようです。その間、上手に、病気と付き合っていく方法を考えましょう。また、「吐く」病気の中には、怖い病気もたくさんありますので、信頼できる主治医を見つけて、きちんと診断を受けるようにしてください。「周期性嘔吐症」はあくまで、別の病気ではないという場合ですので、勝手な思い込みには注意しましょう。

それぞれの新しい生活の中で、そろそろ緊張の継続に疲れ、「慣れ」も加わって、風邪をこじらせたり、憂うつな気分(五月病)になったりする時期です。子どもの体調もさることながら、「元気なお母さん」でいることが、子どもにとっての安定剤です。よく食べ、よく寝て、よくしゃべって(?)、よく笑って、がんばりましょうね、お母さん。

では、次号で、またお会いしましょう。             かしこ

ドクターマム・和田有子

次号は6月を予定しています。